2022年4月上旬にベトナム・中部の世界遺産の町ホイアンに関する衝撃的なニュースが流れました。

「2023年5月15日以降、すべての訪問者はホイアン旧市街に入るときにチケットを購入する必要があります」*

これは現行のホイアン旧市街内で一部の観光地を周れるチケットとして販売されている「観光チケット」を「旧市街の入場チケット」として販売するというもので、ベトナム人観光客あたり 80,000 ドン、外国人観光客あたり 120,000 ドンを、旧市街に入るために払わなければならないという趣旨のものです。

この件に対して、ベトナムではしばらく物議になっていましたが、2023年5月12日(金)ホイアン市人民委員会は、「ホイアンはグループ客の管理に重点を置く。散歩、観光、食事、結婚式の写真撮影などの客は、5月15日からここまで訪れるためにチケットを買う必要はない」とし、チケット販売システムの改正騒動は幕を閉じました。
よって、これまで通り、特定の建造物や観光地を見るのにはチケット購入が必要ですが、旧市街に入るのは自由となります。

*CÔNG TY CỔ PHẦN VCCORP「Từ 15/5, tất cả du khách phải mua vé khi vào phố cổ Hội An」

はじめてニュースになったときの世論の反応
 

「旧市街に入るのに80,000VND！外国人旅行者は120,000VND！」というニュースは、地元の人はもちろん、中部に住む人や、観光業界の人など多くの人衝撃を与えました。
世間の声は比較的、反対意見が多く寄せられたという報道が見られましたが、反対に保護していくにはお金を払う必要があるという意見も少数ではあるものの見られました。

・料金を徴収するのはいいが、まずは料金を見直して旧市街内外のサービスの質を向上させるべきだ。
・「ホイアンに入るすべての人に料金が課されるわけではなく、市は訪問者に対してのみ手数料を徴収し、親戚を訪問する、食事、貿易、仕事などをする人はこの手数料を支払う必要はありません。」と言っているがどのように管理するのか。
・地元住民と観光用の通路を作るというが、それは可能？
・ホイアンのテナントから徴収するならまだしも観光客から徴収したら、観光客は旧市街でお金を落とさなくなり、観光産業が衰退する。

※ニュースやYouTube、Facebookからのベトナム語の意見を抜粋・翻訳したもの。

世界遺産を守るための財源を確保したいホイアン市
 

2019年から始まったチケットの収入が近年コロナの影響もあり著しく低下していることもあり、安定した財源を確保するためにもいわゆる「訪問税」というものを作りたかったホイアン市。
ただ長らく続いた「旧市街にある一部の観光地を周れるチケット」として販売していたものを「ホイアン入場チケット」にすり替えようとした今回の案はうまくいかないのも当然かもしれません。

ホイアン旧市街というのは、テーマパークのようにゲートがあり、囲まれた場所にあるものではありません。町の広い一区画がホイアン旧市街になっており、どこからどこまでと綺麗に線引きするのは地元民でも難しいもの。さらに旧市街を含む周辺には細い路地も多くあり、それぞれの道をすべて塞ぐのは不可能に近く、町の景観や地元民の生活が大きく影響してしまうことが考えられます。

財源を確保するためには、「チケット料金の値上げ」はもちろん、「エリアにある店舗は特別税を義務化」、「宿泊と飲食には文化遺産税を課す」などサービスに対して税金が課されるような、旅行者が手間をかけずに快く払ってくれるような仕組みを作るのが今後の課題ではないでしょうか。

さらにチケットを購入したいと思わせるような仕組みも大切です。

今回の騒動は、ホイアン市がホイアン旧市街を保護、維持していくためにどのようにしたらよいのか、市だけではなく国民が考える機会になったことを信じ、今後のホイアンの持続可能な維持・発展へのアクションを期待します。

実は他の世界遺産と比べても現行のチケット料金はリーズナブル

現行のチケット料金である、ホイアン旧市街の名所を巡ることができるチケットの値段は、外国人120,000VND(約700円)、ベトナム人80,000VND(約460円)。

ホイアン観光局が指定している22カ所の観光地を１つのチケットで外国人は５ヵ所、ベトナム人は３ヶ所入れるものとなっています。

各観光地の整備状況や展示物の魅力という面でホイアン市が改善すべき部分もあると考えますが、全部のチケットを使用したとして、一ヵ所あたりの入場料は150円程度です。

例えばベトナムの「フエ王宮」の入場料は外国人大人200,000VND(約1160円)、フエの名所10個所を周れる共通チケットは大人580,000VND(約3360円)。

お隣カンボジアの「アンコールワット」の１日券は37ドル(5000円)、３日間は62ドル(8450円)となっています。

もちろん世界遺産の規模はそれぞれで、一概に値段だけで見比べることはできません。

またホイアンの場合、写真だけ撮影して帰る人は少なく、最低でもカフェやレストランで食事、お土産品の購入、その他灯篭流しなどのアクティビティをしてから帰る人が多いため、ホイアン滞在ではチケット以外にも平均的な客単価は他の観光地に比べても高いと考えられます。

ただしそれを踏まえた上でも、ホイアン旧市街全体や各観光地は「面積が広い」＆「観光地が点在している」という点から管理は簡単ではなく、「観光地に入るためのチケット」の料金は「ホイアン旧市街」全体を守る上で適正もしくは安い価格ではないでしょうか。

※１VND＝ 0.0058 円、1ドル＝135.96円で計算

ホイアンの各観光地を巡り、ベトナムをより深く知る旅を
 

2012年以降からずっと値段の改正もないホイアン旧市街内の一部の観光地を訪れるためのチケット。

2023年も値段は据え置きで、外国人は120,000VND(５ヵ所の観光地周れる)、ベトナム人は80,000VND(３ヶ所の観光地周れる)というものです。
見て周ることができる観光地は「貿易時代に住んでいた華人や日本人が建てた家や集会所」、「ホイアンの歴史に関する博物館」、「歴史あるレトロな建物」、「音楽に合わせて踊る現地人によるショー」など多岐にわたります。

このチケットの収益は、文化遺産の保存に貢献します。
ホイアンへ観光される方は是非ホイアン旧市街内の飲食店やお土産店での買い物、灯篭流しなどのアクティビティだけでなく、歴史的価値のある建造物を見に行ってはいかがでしょうか。

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